店舗ごとに利益率がばらつくのは、店長の力量に差があるからではありません。営業時間帯に人時をどう置いたかが、率の差になって出ているだけです。
率は結果なので、並べても原因は出てきません。比べるのは率ではなく、営業時間帯だけで割った人時売上高です。本部から率で届いた指示も、人時に直せば、店長がシフト表の上で扱える形になります。
率を並べても、直す場所は出てこない
「人件費率を下げてほしい」と言われて、翌月も同じ人数でシフトを組み直した。締めてみると、率はほとんど変わっていない。
店長が動いていないわけではありません。率のままでは、何をどれだけ直すのかが決まらないことが原因です。
本部の資料には店舗ごとの利益率が並び、いちばん下の店に改善を伝えて、翌月また同じ順位を見る。
店舗の利益率には家賃や本部の費用も混ざります。ここで扱うのは、店長が動かせる人件費の側だけです。
率の差は、どこから来ているのか
実在の店舗ではなく、説明のためのモデルです。営業11時から21時までの店を3つ並べます。3店の平均時給は1,200円にそろえ、配置の差だけが率に出るようにしました。A店の置き方は、姉妹記事のFL比率が下がらない原因と同じです。表の人時(にんじ)は、1人が1時間働くと1人時と数える、働いた時間の合計です。
| 項目 | A店 | B店 | C店 |
|---|---|---|---|
| 日商 | 300,000円 | 300,000円 | 450,000円 |
| オープン準備 | 7人時 | 7人時 | 7人時 |
| 営業時間帯 | 60人時 | 72人時 | 90人時 |
| 締め(クローズ作業) | 8人時 | 8人時 | 8人時 |
| 1日の人時 | 75人時 | 87人時 | 105人時 |
| 人件費(時給1,200円) | 90,000円 | 104,400円 | 126,000円 |
| 人件費率 | 30.0% | 34.8% | 28.0% |
まずA店とB店です。日商は同じ300,000円で、率の差は4.8ポイント。売上も時給も同じなので、この差を作ったのは営業時間帯の12人時だけです。
12人時 × 1,200円 = 14,400円
1日14,400円、月26日で374,400円、1年で約449万円。率の表に出ていたのは、この置き方の差です。
次にC店です。日商が1.5倍で、営業時間帯の人時も1.5倍。準備と締めは同じ枠のままです。率がいちばん低いのは28.0%のC店ですが、置き方はA店と同じです。
準備と締めの15人時は、日商が増えても増えません。売上が1.5倍になるとこの15人時が売上に対して薄まるので、率だけが下がります。
率で並べると、日商の大きい店が上に来ます。 上位にいるのは、配置がうまい店ではなく大きい店です。
なお、準備7人時と締め8人時は、日商が1.5倍のC店でも同じ枠に置いた仮定です。日商に合わせて仕込みを増やす店なら、C店の率はもう少し高く出ます。
並べるのは率ではなく人時売上高
人時売上高は、売上を人時で割った1人時あたりの売上高です(出し方は人時の計算のやり方)。
配置を比べるときは、営業時間帯の人時だけで割ります。準備と締めは売上を作らないので、分母に入れると基準が薄まります(適正人員の出し方)。
300,000円 ÷ 営業60人時 = 5,000円
3店を、2つの分母で並べ直します。B店は300,000円 ÷ 72人時 = 4,166.7円で、以下は四捨五入した4,167円と書きます。
| 店舗 | 日商 | 営業だけで割る | 1日の合計で割る | 人件費率 |
|---|---|---|---|---|
| A店 | 300,000円 | 5,000円 | 4,000円 | 30.0% |
| B店 | 300,000円 | 4,167円 | 約3,448円 | 34.8% |
| C店 | 450,000円 | 5,000円 | 約4,286円 | 28.0% |
A店とC店は5,000円で同じです。率では2.0ポイント離れていた2店が、配置の基準では並びます。外れているのはB店の1店だけで、率の表では3店に差がありましたが、直すところがある店は1つでした。
分母の取り方は全店で1つに決めます。A店が1日の合計で割った4,000円を出し、B店が営業だけで割った4,167円を出すと、B店のほうが高く見えます。同じ分母で見れば、A店が833円上です。
分母をそろえても、平均時給が店ごとに違えば率は動きます。人件費率は、平均時給を1日の合計で割った人時売上高で割った値です。A店の30.0%も、1,200円 ÷ 4,000円で出ています。
1,350円 ÷ 4,000円 = 33.8%/1,150円 ÷ 4,000円 = 28.8%
A店と同じ4,000円でも、平均時給が1,350円の店は33.8%、1,150円の店は28.8%です。率の差5.0ポイントは、配置ではなく時給から来ています。配置の良し悪しは人時売上高、賃金水準は平均時給で、分けて見ます。
なお、仕込み中にテイクアウトやデリバリーの売上が立つ店は、その時間帯を分母に入れます。
差の埋め方で、利益はどう動くのか
B店の833円を埋める手は2つあります。どちらも同じ表から出ますが、動く利益の額が違います。
食材費が売上の30%のモデルなので、売上が増えたときに残る粗利は増収の70%です。
| 埋め方 | 計算 | 動く利益 |
|---|---|---|
| 人時を減らす | 300,000 ÷ 5,000 = 60人時。営業を12人時外す | 人件費が14,400円減る。利益は1日14,400円 |
| 売上を増やす | 72人時 × 5,000 = 360,000円。日商を60,000円上げる | 増収の粗利は60,000 × 0.7 = 42,000円。利益は1日42,000円 |
月26日なら、人時のほうが374,400円、売上のほうが1,092,000円です。同じ833円の差でも、動く利益は2.9倍ちがいます。
ただし、日商を20%上げるのと営業の人時を12人時外すのは、難しさが同じではありません。人時を外した結果ピークで売り逃せば、落ちた売上の70%が利益から引かれます。
立地や席数で日商が伸びない店なら人時、ピークで待ちが出ている店なら売上です。時給水準が高い店は同じ人時売上高でも率が高く出るので、順位は率ではなく人時売上高で見ます。比べるのは率ではなく額です(率と額の差は最低賃金が上がると利益はいくら減るのかに書きました)。
店長に渡すのは率ではなく人時
「人件費率を30.0%にしてほしい」は、店長の手元では作業になりません。人時に直してから渡します。
300,000円 × 30.0% = 90,000円 ÷ 1,200円 = 75人時
75人時から準備7人時と締め8人時を引くと、営業時間帯に置けるのは60人時。シフト表に書ける形になります。
渡す数字は3つで足ります。
- 営業時間帯に置ける人時(60人時)
- 目標人時売上高(5,000円)
- 準備と締めの枠(7人時・8人時)
上限を先に持っておくと、組んでから率を見る順番にならずに済みます(人件費率がオーバーする原因)。
手作業は、どこで止まるのか
3店ぶんなら、この表は電卓で作れます。続けると次で止まります。
- 店舗ごとに営業時間が違うので、営業時間帯の人時を毎月そろえて取り出す
- 打刻から出した人時は、準備と締めが混ざったまま上がってくる
とくに最後が効きます。分母が混ざった数字が1店でも入ると、表そのものが読めなくなります。
Profit Shiftなら、全店の人時と売上を1つの画面で並べられる
Profit Shiftは、売上目標から必要な人時を出し、その人時でシフトを組み、出退勤の打刻までつなげて見る道具です。この記事でやったことは、画面ではこう対応します。
| この記事でやること | Profit Shiftの画面 |
|---|---|
| 店舗ごとの売上と人時を1枚で見る | 会社トップの「全店実績」。店舗カードに売上目標・実績・達成率と、打刻から出した人時と、人件費・人件費率が並ぶ |
| 人時売上高を店ごとに出す | 同じカードの売上実績と人時から出す。カードの人時は打刻の合計なので、全店で分母の取り方がそろう |
| 売上の立たない時間帯を分けて持つ | 「設定」の「時間帯区分(部制)」。「売上なし」にした時間帯は人時には数え、必要売上には数えない |
| 店舗ごとに基準を持つ | 「理想人時」の表②(日商→必要人時)と表①(配置人数→1時間あたりの目標売上)。店舗ごとに別の値を持てる |
カードの人件費には月給制の社員の月額が全額入るので、月の途中は高めに出ます。店舗間で並べるのは打刻の人時と売上です。率は社員構成で動くので、順位には使いません。
カードの人時には準備と締めも入るので、出るのは1日の合計で割った値です。営業時間帯だけの基準は、店舗ごとの表②から持ちます。
店舗カードの人件費率には色が付き、25%・30%・35%が境になります。達成率は80%を下回ると赤で出ます。どの店から先に見るかは、この色で決められます。
ただし、色を塗るのは固定費を日割りした率です。表示されている率そのものの色分けではありません。
シフトの作成と出退勤の打刻、売上目標と日次の集計は無料プラン(1店舗・スタッフ10名まで)から試せます。全店実績の画面はどのプランでも開けます。ただし無料プランは1店舗なので、複数店舗を並べるには店舗を増やせるプランが必要です。
分母を決めるのは会社です。Profit Shiftが引き受けるのは、店舗ごとの人時と人件費を同じ形で並べる手間です。
まとめ
- 店舗ごとの利益率を並べても、どこをいくら直すのかは出てこない
- 同じ日商・同じ時給でも、営業の人時が12人時違えば率は4.8ポイント動く
- 率は日商の大きい店が低く出る。準備と締めの人時が薄まるため
- 比べるのは営業時間帯だけで割った人時売上高。モデル例では5,000円
- 833円の差を埋める手は2つ。動く利益は1日14,400円と42,000円で違う
店舗ごとに持つ人時の上限は、人時シミュレーターで出せます。目標の売上と人件費率を入れると、1か月に使える人時と1日あたりの人時が出ます。店ごとに同じ入れ方で出しておくと、比べる数字が率ではなく人時になります。登録もログインも要らず、入力した数字はお使いの端末の中だけに残ります。
