人件費率がオーバーする原因は、計算を間違えているからではありません。シフトを組んでから人件費を計算しているからです。

順番を逆にするだけで、月末の答え合わせは「組む前の予算どり」に変わります。

月末に計算しても、もう打つ手がない

締め作業をして人件費率を出す。目標より2ポイント高い。原因を探すと、雨で暇だった日に4人置いていたことに気づく。

ただ、その日はもう終わっています。

これは店長の管理が甘いから起きるのではありません。人件費率という数字が、月が終わらないと確定しない形になっているために起きます。率は「人件費 ÷ 売上」なので、分母も分子も月末まで動き続けます。動いているものは、途中で守りようがありません。

なぜシフトは人件費と切れてしまうのか

シフトを組むとき、店長が見ているのは主に次の3つです。

  • 誰が出られるか(希望)
  • その時間に何人必要か(オペレーション)
  • 連勤や労働時間の決まりを守れているか(労務)

どれも必要な判断です。しかし、この3つのどこにも金額が出てきません。人件費は「組み終わったシフトを時給で掛け算した結果」として、あとから現れます。

結果として、シフト作成と人件費管理が別々の作業になります。片方は週次、もう片方は月次。つながっていないので、ズレても気づくのは月末です。

順番を入れ替える — 先に「使える時間」を出す

やることは1つです。シフトを組む前に、今月使える人時の上限を出しておく。

手順は3ステップです。

  1. 今月の目標売上を決める(すでに決まっているはずです)
  2. 人件費率をかけて、人件費の予算を出す
  3. 予算を時給で割って、使える時間に変える

金額のままでは配置に使えませんが、時間に直すとシフト表の上で扱えるようになります。

数字で追う(モデル例)

実在の店舗ではなく、説明のためのモデルとして置いた数字です。

項目
今月の目標売上4,375,000円
目標の人件費率28%
社員(店長)の月給300,000円
アルバイトの平均時給1,100円
営業日数25日

順に計算します。

① 人件費の予算 4,375,000円 × 28% = 1,225,000円

② アルバイトに使える分 社員の給与は働く時間に関わらず出ていくので、先に引きます。 1,225,000円 − 300,000円 = 925,000円

③ 時間に直す 925,000円 ÷ 1,100円 = 840.9時間

ここに社員自身が働く時間(月あたり約171.4時間)を足すと、店全体で使えるのは 1,012.3時間。営業日数で割ると、

1日あたり 40.5時間

これが「今月の上限」です。10時間営業なら平均4人が立てる計算になります。

数字が出た瞬間に、シフトの見え方が変わります。今日6人置いたら、その分どこかで減らす必要があることが、組みながら分かるようになります。

上限を持つと、判断が変わる

この40.5時間は「守るべきノルマ」ではありません。配るための総量です。

金曜の夜に厚く置きたいなら、火曜の昼を薄くする。イベントがある日に6人置くなら、その週のどこかで取り返す。どこに厚く置くかを決めるのが店長の仕事で、総額を決めるのは売上目標のほうです。

ここを取り違えると、人件費削減が「全部の日をまんべんなく薄くする」になります。それは売上を落とす削り方です。忙しい日に人が足りなければ、回転が落ちて客単価も下がります。

人件費は削るものではなく、配るもの。 上限を先に持っておくことは、削るためではなく、迷わず厚く置くためにあります。

手作業で続けるときの限界

考え方そのものは電卓でできます。実際、月初に一度計算して紙に書いておくだけでも効きます。

ただ、これを毎月続けようとすると次で止まります。

  • 売上目標を月の途中で変えたら、上限も計算し直しになる
  • 人が入れ替わると平均時給が動く
  • 「今月あと何時間残っているか」は、実績を集計しないと出ない
  • 店舗が増えると、この一式が店舗の数だけ増える

とくに最後の「あと何時間残っているか」が曲者です。上限を決めても、途中経過が見えなければ月末の答え合わせに戻ってしまいます。

まとめ

  • 人件費率がオーバーするのは、シフトを組んでから人件費を計算しているから
  • 順番を入れ替えて、組む前に「今月使える人時」を出しておく
  • 出し方は3ステップ。目標売上 × 人件費率 ÷ 平均時給
  • 出た時間は守るノルマではなく、厚く置く場所を決めるための総量
  • 続けるうえでの壁は「あと何時間残っているか」が見えないこと

上限を出すところは、人時シミュレーターで試せます。目標売上と人件費率を入れると、上の計算をそのまま実行して1日あたりの人時まで出します。登録もログインも要らず、入力した数字はお使いの端末の中だけに残ります。