店長が休めないのは、人が足りないからではありません。店長の人時が計画に入っておらず、足りない分の受け皿になっているからです。

受け皿は数字に出ません。店長が穴を埋めた月ほど人件費率は低く出るので、いちばん休めていない月が、いちばん良い月として記録に残ります。

店長は、穴が空いたときに呼ばれる

休みの日の昼に電話が鳴る。夕方の1人が熱を出したが、代わりが見つからない。そのまま店に向かい、閉店まで立つ。

翌月も同じことが起きます。休みの日数は表の上では取れているのに、取れた実感が無い。足りないときの行き先が、店長しかないという形になっています。

店長の時間は、最初から計画に入っている

入っています。月の人時を出すとき、店長の働く時間は最初から総量の中に数えられています。出し方は人件費率がオーバーする原因に書きました。

項目値
今月の目標売上4,500,000円
目標の人件費率28%
人件費の予算1,260,000円
店長(社員)の月給300,000円
アルバイトに使える額960,000円
アルバイトの人時(÷ 1,200円)800.0時間
店長の人時171.4時間
店全体で使える人時971.4時間
営業日数25日

実在の店舗ではなく、説明のためのモデルとして置いた数字です。

計画には入っているのに、シフト表には店長の枠がありません。アルバイトの枠だけが埋まり、埋まらなかった分が店長のところへ流れます。入っていないのは計画ではなく、シフト表のほうです。

穴を埋めた月ほど、人件費率は低く出る

店長の171.4時間を営業日25日で割ると、1日の労働時間が出ます。ここでいう労働時間は、休憩を除いた時間です。

171.4時間 ÷ 25日 = 6.9時間

穴を埋めると、ここが伸びます。1日8.8時間まで伸びた月を置きます。

8.8時間 × 25日 = 220.0時間(計画より 48.6時間多い)

この48.6時間をアルバイトで埋めていたら、48.6 × 1,200円 で58,320円かかりました。店長が立つと、この金額はどこにも出ません。

時間外の割増が付かない前提で置いたモデルです。管理監督者に当たらない場合は、割増賃金が発生します。

店長が埋めた月アルバイトで埋めた月
店全体の人時1,020.0時間1,020.0時間
うち店長220.0時間171.4時間
うちアルバイト800.0時間848.6時間
人件費1,260,000円1,318,320円
人件費率28.0%29.3%
店長の労働時間(1日)8.8時間6.9時間

仕事の量は同じです。それでも率は1.3ポイント違い、低いほうが、店長が休めていない月になります。

毎月同じだけ埋めているなら、58,320円 × 12で年に699,840円が、数字に出ないまま使われています。

同じ仕事量の2か月の比較。店長が埋めた月は店長220.0時間とアルバイト800.0時間で人件費1,260,000円、人件費率28.0%、店長の1日は8.8時間。アルバイトで埋めた月は店長171.4時間とアルバイト848.6時間で1,318,320円、29.3%、1日6.9時間。店全体はどちらも1,020.0時間

人件費率は、店長の時間を測らない指標です。率だけを見て「今月は良かった」と言える月ほど、確かめる価値があります。

抜けられない形は、月初の割り算で決まる

月初に割り算をした瞬間です。171.4時間を営業日25日で割った6.9時間には、店長が休む日が1日も入っていません。

もともと171.4時間は、週40時間を月に直した数字です。週40時間は1日8時間 × 週5日なので、この数字自体が月8.6日の休みを含んでいます。

割り方1日の労働時間含まれる休み(30日の月)
171.4 ÷ 25日(全営業日に立つ)6.9時間5日
171.4 ÷ 22日7.8時間8日
171.4 ÷ 21.4日(週40時間の元の形)8.0時間8.6日
171.4 ÷ 20日8.6時間10日

営業日数で割ると、元の数字に入っていた8.6日が消えます。人が足りないから抜けられないのではなく、抜ける前提で割っていないだけです。

171.4時間を何日で割るかの比較。25日なら1日6.9時間で休みは30日の月に5日、22日なら7.8時間で8日、週40時間の元の形の21.4日なら8.0時間で8.6日、20日なら8.6時間で10日。月の合計171.4時間は動かず、変わるのは1日の長さと休みの日数だけ

店長の枠は、アルバイトより先に置く

割る相手を、営業日数から出勤日数に変えます。月の合計171.4時間は1行も動いていません。

変わるのは1日の長さだけで、6.9時間を8.6時間にすると、休みは5日から10日になります。8.6時間は、アルバイトの遅番とほぼ同じ長さです。

手順は6つです。

  1. 店長の月の人時を出す(モデル例では171.4時間)
  2. 出勤日数を先に決め、休む日をカレンダーに置く(売上の山の日は休みにしない)
  3. 人時を出勤日数で割り、1日の労働時間を出す(171.4 ÷ 20 = 8.6時間)
  4. 店長の枠を、希望を集める前にシフト表へ入れる
  5. 残りの枠に、アルバイトの800.0時間を配る
  6. 店長が休む日に削ってよい時間帯と、人時の下限を書いておく

法定労働時間は週40時間かつ1日8時間です。1日8時間を超える日を置くときは、変形労働時間制の定めがあるかを就業規則で確認し、無ければ超えた分は時間外になります。

肝心なのは4です。希望を集めてから店長を入れると、店長の枠は毎月そのまま残り物になります。希望の集め方そのものはシフト希望が集まらないにまとめました。

リーダーは、大事なときにそこにいる

休む日を決めるときに、やりがちな置き方があります。平日の暇な日に店長を入れて、人が集まりやすい土日を休みにするという形です。

シフトの上では、これで埋まります。土日はアルバイトスタッフが出られるので、頭数は足ります。

それでも、この置き方は勧めません。土日は、お客様がいちばん多く来る日だからです。いちばん大事な時間に、決められる人がいない状態になります。

大事な日にいるというのは、気持ちの問題ではありません。判断が要る場面が、その日にいちばん多く出るからです。行列が伸びたときに持ち場を動かす、品切れの手を打つ、クレームにその場で答える。どれも、あとから聞いても取り返せません。

だから土日は、多少人時をオーバーしても店長が立ちます。そのぶん、暇な平日から店長の枠を外します。月の総量は変わりません。動かすのは、どの日に置くかだけです。

売上の山に厚く人を置く考え方は売上を作るシフトに書きました。店長の枠も、同じ見方で置きます。

私は店長のとき、1日8時間・週休2日で働いていた

私自身の話です。店長だったころ、私は1日8時間・週休2日で働いていました。自分でシフトを組んでいたときも、アルバイトスタッフにシフトを作ってもらっていたときも、この形は変えていません。枠が先に入っていれば、組む人が代わっても形は変わらないからです。

同じころ、「休めない」と言っていた他店の店長がいました。1日10時間以上立ち、休みは月に3日か4日。それが当たり前になっていました。

それでも、店の数字は私の店のほうが良かったのです。売上も、利益もです。お客様の評価も、スタッフの定着も良い状態でした。

理由ははっきりしています。私がいちばん楽しく働いていたからです。

店長が健康で、楽しそうに働いている。それを毎日見ているスタッフは、同じように働きます。チームが一丸になるのは、号令をかけたときではなく、見えている姿が変わったときです。

店長が倒れそうな顔で立っている店で、スタッフだけが楽しく働くことはありません。店長の休みは、店長のためだけの話ではない、ということです。

休んだ日の穴は、時間ではなく中身で埋める

時間の上では、誰も埋めません。

新しく休める5日(5日から10日へ増えた分)には、6.9時間ずつ空きます。合計34.5時間。

一方で出勤する20日は1日1.7時間ずつ長くなるので、20日で34.0時間が戻ります(差の0.5時間は丸めの端数)。

店全体の971.4時間は、1時間も増えません。 増えるのではなく、置き場所が変わるだけです。店長が動かせるのは人件費の総額ではなく配置で、これは自分の時間についても同じです。

休みの日に欠勤が出たら、店長を呼ぶ前に、どの枠を削るかを先に決めておきます。月初に時間帯ごとの人時の下限を置いておけば、当日は表を見るだけで済みます。

埋める必要があるのは時間ではなく、中身のほうです。店長の6.9時間を書き出すと、置き換えられる時間と置き換えられない時間に分かれます。

店長の1日の中身(モデル例)時間(例)引き継げるか
発注と納品の確認1.0時間手順を書けば引き継げる
仕込みと営業の持ち場3.4時間引き継げる
締め・日報・現金の確認1.0時間権限を渡せば引き継げる
面談・採用・クレームの対応1.5時間店長が出る日に寄せる
合計6.9時間

時間の欄は、書き出しの形を示すために置いた例です。実際の値は、自店の1日を測って入れ替えます。

この例では引き継げないのが1.5時間、残りの5.4時間は手順が書いてあれば他の人が立てます。割合は自店の書き出し次第で変わります。

書き出し方は仕込みの時間の棚卸と同じで、作業を名前と時間に分けるところから始めます。

「休ませてください」と「稼げない」の板挟み

最近は、労働局から「休みを取らせてください」と言われて悩む社長の相談が増えています。言われたとおりに休みを増やすと、今度はスタッフから「稼げない」と言われます。

板挟みになるのは、休みも稼ぎも、人数の増減だけで解こうとするからです。この記事でやったのは、同じ総量の中で、誰がいつ立つかを決め直すことでした。総量は1時間も増えていません。

先に変えるのは人数ではなく、組織の形と、仕組みと、意識です。

手作業で続けるときの限界

割り直しは電卓でできます。月初に一度やって、休む日を先にカレンダーへ書くだけでも変わります。

続けようとすると、次で止まります。

  • 売上目標が動くと、月の総量も店長の1日も出し直しになる
  • 店長の枠を先に置いても、希望を当てていくうちに崩れる
  • 崩れたかどうかは、月末に打刻を集計しないと分からない
  • 店舗が増えると、この一式が店舗の数だけ増える

とくに3つめが効きます。店長が計画より何時間多く立ったかは、実績を集めないと出ません。 出ない間は、人件費率だけが良いまま残り続けます。

Profit Shiftなら、店長の枠を先に置いて、立った時間を実績で見られる

Profit Shiftは、売上目標から必要な人時を出し、その人時でシフトを組み、出退勤の打刻までつなげて見る道具です。この記事でやったことは、画面ではこう対応します。

この記事でやることProfit Shiftの画面
月に使える人時の総量を出す「人時シミュレーター」(登録不要)。「くわしく」にすると、社員の人数から出した社員人時と補正欄も出る
店長の枠を、希望を当てる前に置く「シフト」の日ごとの画面。店長も1行として置ける
店長が立っても人件費が動かないことを確かめる「シフト」の月の画面の「計画人件費」。月給の社員は固定費として載るので、立った時間では動かない
計画と実績のズレを見る同じ月の画面の「月間目標 (税抜)」と「月間実績 (税抜)」、日ごとの「計画h / 過不足」
店長が何時間立ったかを月で見る「労務サマリー」。スタッフごとの月の総労働が打刻から出る(月給制の人も並ぶ)

人件費率を見ているかぎり、店長が立った時間は最後まで出てきません。時間そのものは「労務サマリー」の総労働で見ます。

「労務サマリー」を開けるのは、オーナーの権限を持つ人です。シフトの作成と出退勤の打刻、売上目標と日次の集計は、無料プラン(1店舗・スタッフ10名まで)から使えます。

休む日を決めるのは店長と店で、Profit Shiftが引き受けるのは、総量の計算と、立った時間を数え直す手間です。

まとめ

  • 抜けられないのは人手不足ではなく、足りない分の行き先が店長しかないから
  • 店長の人時は計画に入っている。入っていないのはシフト表の枠のほう
  • 店長が埋めても人件費は動かない。埋めた月ほど率は低く出る(28.0%と29.3%)
  • 171.4時間は週40時間の月換算で、もともと月8.6日の休みを含んでいる
  • 総量は1時間も増えない。動くのは置き場所と、引き継ぐ作業の中身
  • 店長時代の私は1日8時間・週休2日。それでも数字は良かった。店長が楽しく働く姿が、そのままチームに映る
  • 休む日は、いちばん大事な日から外す。土日は多少人時をオーバーしても店長が立ち、そのぶん平日の枠を外す
  • 休みと稼ぎの板挟みは、人数の増減では解けない。先に変えるのは組織の形と仕組みと意識
  • Profit Shiftなら、店長の枠を先に置ける。立った時間は「労務サマリー」の総労働で確かめる

店長の時間を含んだ月の総量は、人時シミュレーターで出せます。目標の売上と人件費率、平均時給と営業日数を入れると、1か月に使える人時と1日あたりの人時が出ます。「くわしく」に切り替えると、社員の人数から出した社員人時と、その補正欄(空なら自動)も出ます。登録もログインも要らず、入力した数字はお使いの端末の中だけに残ります。