人件費を削ったら売上まで落ちるのは、削る量が多すぎたからではありません。削る場所を人件費率で選んでいるからです。
率は分母の売上が落ちれば一緒に下がるので、削りすぎた日ほど数字はきれいに見えます。削る場所は、時間帯の人時売上高で選びます。
削ったのに、利益は残らない
暇な日は1人減らした。遅番を1時間早く上げた。休憩を細かく回した。月末の人件費率は目標の中に収まっている。
それでも、残った利益は先月と変わらない。
削り方が乱暴だったわけではありません。削る場所を選ぶ根拠が、人件費率しか無かったことが原因です。率は削った結果を映しますが、どこを削るべきかは教えてくれません。
人件費率は削りすぎを教えない
人件費率は「人件費 ÷ 売上」です。人を減らせば分子が減ります。ただ、その結果として売上が落ちれば、分母も減ります。
分子と分母が同じ向きに動くので、削りすぎても率は悪くなりません。
数字で追う(モデル例)
実在の店舗ではなく、説明のためのモデルです。準備7人時・営業60人時・締め8人時の1日75人時、平均時給1,200円で、日商30万円を作る店とします。目標どおりの日の人件費率は30.0%です。この日のピークの4時間から2人を外した場合を並べます。
| 項目 | ピークをそのまま置いた日 | ピークを2人 × 4時間 削った日 |
|---|---|---|
| 売上 | 300,000円 | 276,000円 |
| 人時 | 75人時 | 67人時 |
| 人件費(平均時給1,200円) | 90,000円 | 80,400円 |
| 人件費率 | 30.0% | 29.1% |
率は0.9ポイント下がりました。数字だけを見れば、削ったほうが良い日です。
実際に起きたことを、利益の額で見ます。売上が落ちると、原価のぶんを除いた粗利も落ちます。モデル店の粗利率を70%とすると、こうなります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上の減り | 24,000円 |
| 粗利の減り(× 70%) | 16,800円 |
| 人件費の浮き | 9,600円 |
| 利益の差 | 7,200円 減る |
人件費は9,600円浮きましたが、粗利が16,800円減ったので、利益は1日7,200円減っています。それでも率は良くなる。ここが、率で削りすぎを見つけられない理由です。
同じ削り方を月26日続ければ、利益の差は月187,200円、1年で約225万円です。率を見ているかぎり、この額はどこにも出てきません。率ではなく額で見る考え方は最低賃金が上がると利益はいくら減るのかに書きました。
見るべきなのは率そのものではありません。人件費率が良く見える日ほど、売り逃しを疑います。
削りすぎは人時売上高の高さに出る
削りすぎを見つける数字は、人時売上高です。売上を人時で割った、1人時あたりの売上高を指します(出し方は人時の計算のやり方)。
配置の判断に使うときは、営業時間帯の人時だけで割ります。準備と締めの時間は売上を作らないので、分母に入れると基準が薄まります(適正人員の出し方)。
300,000円 ÷ 営業60人時 = 5,000円
これがモデル店の目標です。1日の合計75人時で割った4,000円は店全体の効率を見る値で、時間帯の判断には使いません。
同じ日の時間帯を、目標との差で並べます。
| 時間帯 | 売上 | 人時 | 人時売上高 | 目標との差 |
|---|---|---|---|---|
| 11時台 | 15,000円 | 5 | 3,000円 | −2,000円 |
| 12時台 | 42,000円 | 6 | 7,000円 | +2,000円 |
| 15時台 | 6,000円 | 3 | 2,000円 | −3,000円 |
| 19時台 | 64,000円 | 8 | 8,000円 | +3,000円 |
| 20時台 | 39,000円 | 6 | 6,500円 | +1,500円 |
19時台は目標の1.6倍です。少ない人で多く売っているので、効率が良い時間帯に見えます。
ただ、1人時あたり8,000円は、その時間の人が動きっぱなしだったという意味でもあります。待たせて帰った客がいたかどうかは、レジの数字には残りません。
目標を大きく上回る時間帯は、効率の良い時間ではなく、上限に張り付いた時間として見ます。
私の店で、実際に起きたこと
私がコールド・ストーン・クリーマリーの店長だったときのことです。ずっと行列ができている時間帯がありました。
その時間は最大8人時で、1時間の売上が6万円。1人時あたり7,500円、人件費率は25%です。数字だけ見れば、うまく回っている時間でした。
そこで人時を一気に14人時に増やしました。その1時間の売上は12万円になり、1人時あたり8,571円、人件費率は21%まで下がりました。
人を増やして、率が下がったのです。売上を決めていたのは「つくる人」の数で、8人時のときは作りきれないお客様を帰していた、ということです。
ただし、これはお客様が並んでいたから起きたことです。行列が無い時間に人を増やしても、売上は増えません。人時売上高が高い時間帯を見つけたら、その時間に行列や待ちが出ていないかを一緒に見てください。
確かめ方は1つです。同じ曜日の同じ時間帯に1人時だけ足した日を作り、売上を比べます。足した1人時は1,200円です。粗利率70%なら、その時間の売上が約1,714円(1,200 ÷ 0.7)以上増えれば、足したほうが利益が残ります。
削ってよい時間帯は、目標を下回っている
削る場所は、目標を下回っている時間帯です。
モデル例の15時台は、3人時で6,000円。1人時あたり2,000円で、目標の5,000円を3,000円下回っています。ここを2人時に減らしても、席が埋まっていないので売上は落ちにくい。浮くのは1,200円です。
金額としては小さく見えます。それでも、これが率では見つからない削り方です。
| 時間帯の状態 | 人時売上高 | 判断 |
|---|---|---|
| 目標を大きく下回る | 5,000円を大きく下回る | 減らす。売上は落ちにくい |
| 目標の前後 | 5,000円前後 | そのまま置く |
| 目標を大きく上回る | 5,000円を大きく上回る | 減らさない。足せるかを見る |
人件費率だけを見て削ると、この判断が逆になります。率を早く下げたいときに目が行くのは、人数の多い時間帯だからです。人数が多いのはピークで、ピークは削ってはいけない時間帯です。
削るのは人ではなく、置き方の形
人件費が下がらない店は起点が人になっている、と売上を作るシフトに書きました。削りすぎる店も、詰まっている場所は同じです。
起点が人だと、削る操作も人の単位になります。1人減らす。1時間早く上げる。どの時間帯から減るかは、決めていません。
売上目標からラインを描いていれば、削る操作は時間帯と持ち場の単位になります。15時台にドリンクの持ち場を閉じる。準備を前日に30分回す。売上の山を残したまま、人時だけが減ります。
下がらないと下げすぎは、同じ1本の線の両側です。線が引けていないから、どちらにも振れます。
手作業の限界
時間帯ごとの人時売上高は、紙と電卓でも出せます。ただ、続けると次で止まります。
- 時間帯別の売上と打刻の両方を、時間帯をそろえて突き合わせる必要がある
- 目標人時売上高は、売上目標が変わるたびに出し直しになる
- 削った時間帯の売上がその後どうなったかが、翌月には残っていない
とくに最後が効きます。削った結果が残らないので、毎月同じ場所を削ります。
Profit Shiftなら、置いた人数ごとの必要売上を見ながら削る場所を選べる
Profit Shiftは、売上目標から必要な人時を出し、その人時でシフトを組み、出退勤の打刻までつなげて見る道具です。この記事でやったことは、画面ではこう対応します。
| この記事でやること | Profit Shiftの画面 |
|---|---|
| 置いた人数に見合う1時間の売上を決めておく | 「理想人時設定」の表①に、配置人数ごとの時間あたりの目標売上を決めておく |
| 削る前に、時間帯ごとの人数と売上の目安を見比べる | 「シフト」の日ごとの画面。いちばん下の「実人数」(30分ごと)と「必要売上」(1時間ごと)の行 |
| 準備と締めを、売上の基準から外す | 「設定」の「時間帯区分(部制)」で「売上なし」にした時間帯は、人時には数え、必要売上には数えない |
| 組んだ人時で、いくら売れば率が保てるかを見る | 「シフト」の日ごとの画面の上にある「必要売上」(この人時で必要)。組んだ人件費を30%で割った売上 |
| 削った結果を額で確かめる | 「ダッシュボード」。今日までの売上の目標と実績、人件費と人件費率(時給の人は打刻の実績、月給の人は月給を営業日で割った分) |
いちばん下の「必要売上」の行は、その時間に置いた人数から表①で出る目標です。レジの時間帯別の売上と並べると、目標を大きく下回る時間帯と、大きく上回る時間帯が分かります。時間帯別の売上の実績は、お使いのレジの記録で確かめます。
シフトの作成と出退勤の打刻、売上目標と日次の集計は、無料プラン(1店舗・スタッフ10名まで)から使えます。
どの時間帯を削るかを決めるのは店で、Profit Shiftが引き受けるのは、人数ごとの必要売上を時間帯に並べる手間です。
まとめ
- 削って売上まで落ちるのは、削る場所を人件費率で選んでいるから
- 率は分母の売上も一緒に落ちる。削りすぎた日ほどきれいに見える
- 額で見ると、モデル例では人件費が9,600円浮いても粗利が16,800円減り、利益は1日7,200円減る
- 削りすぎのサインは時間帯の人時売上高。目標を大きく上回る時間帯を疑う
- 行列がある時間は、人を足すと売上が伸びる(店長時代に8人時→14人時で1時間6万円→12万円、人件費率25%→21%)
- 削るのは目標を下回る時間帯。モデル例では15時台の1人時、1,200円ぶん
- ピークから削ると売上が先に落ちる。削るのは人ではなく置き方の形
- Profit Shiftなら、置いた人数ごとの「必要売上」を1時間ごとに見ながら、削る時間帯を選べる
削る前に持っておく人時の上限は、人時シミュレーターで出せます。目標の売上と人件費率を入れると、1か月に使える人時と1日あたりの人時が出ます。上限を先に持っておくと、削る場所を率ではなく時間で選べます。登録もログインも要らず、入力した数字はお使いの端末の中だけに残ります。
