飲食店の人件費が下がらないのは、削り方が足りないからではありません。出られる人から組む「人起点のシフト」だからです。売上からラインを描いて人を当てる「売上を作るシフト」に変えると、人件費はシフトを描いた時点で決まります。

削るのをやめて、起点を変えます。

削っているのに、下がらない

暇な日は人を減らした。休憩を細かく回した。遅番を30分早く上げた。それでも月末の人件費率は、先月とほとんど変わらない。削るほど現場は荒れて、忙しい日にクレームが増える。

こういう店は、削り方が下手なのではありません。削っている相手が違います。 削っているのは人で、本当に見るべきは売上を作るための配置です。

2つのシフト — 人起点か、売上起点か

シフトの組み方は、突き詰めると2通りしかありません。

人起点のシフト売上を作るシフト
最初に見るもの出られる人・希望その日の売上目標
人数の決まり方置ける人の数売上から描いたライン(持ち場の並び)
人件費が決まる時点組み終わったあと(結果)ラインを描いた時点(先)
暇な日に4人出られるとき4人置くラインが3人なら3人
削るとき人を一律に薄くするラインをたたむ時間帯を決める

多くの店は左です。希望を集め、出られる人を並べ、余ったら削り、足りなければ頼む。この順番だと、人件費は「いる人の合計」としてあとから決まります。 削ろうとしても、どこを削るべきかの根拠が無いので、一律に薄くするしかない。薄くすれば売上が落ちる。だから下がりません。

右は、売上目標から先にシフトの形を決めます。人件費はその時点で決まっていて、人はそこに当てるだけです。

売上を作るシフトは、ラインから描く

売上を作るシフトの道具が、ラインです。ラインは、その時間帯に、どの持ち場に何人いる必要があるか、の並びです。人の名前はまだ入っていません。

数字で追う(モデル例)

実在の店舗ではなく、説明のためのモデルです。土曜の売上目標を30万円とした店のラインを描きます。

時間帯キッチンホールレジ・ドリンク人数人時
9〜11時(準備)21036
11〜14時221515
14〜17時11139
17〜21時231624
21〜23時(締め)22048
合計62人時

売上を作るシフトのライン。上に売上の山、下に時間帯×持ち場の表。キッチンは2・2・1・2・2人、ホールは1・2・1・3・2人、レジとドリンクは0・1・1・1・0人。人時は6・15・9・24・8で合計62人時。62人時×平均時給1,100円=68,200円で売上30万円に対して22.7%。まだ誰の名前も入っていない

このラインは、売上30万円の日に必要な人時(62時間)とぴったり合っています。合わせ方は簡単で、売上の山(11〜14時と17〜21時)に厚く、谷に薄く置き、合計が62になるように調整しただけです。

ラインが決まった瞬間に、人件費も決まります。

62人時 × 平均時給1,100円 = 68,200円(売上30万円に対して 22.7%)

まだ誰の名前も入っていないのに、人件費はもう出ています。これが「売上を作るシフト」の正体です。

手順 — 売上を作るシフトの組み方

  1. その日の売上目標を決める
  2. 売上目標から、必要な人時を出す(売上ごとの必要人時の表、または目標人時売上高で割る)
  3. 時間帯と持ち場に配って、ラインを描く(売上の山に厚く、合計を手順2で出した人時に合わせる)
  4. 希望をラインに当てる(当てるのは「人」を「持ち場 × 時間帯」に)
  5. 埋まらない枠は、時間で示して募る(「17〜21時に、あと1人」)

2の出し方は人時の計算のやり方に、3の人数の出し方は適正人員の出し方に、5の埋め方は人手が足りなくて組めないときにまとめました。この記事は、その全部の前にある起点の話です。

ラインができると、希望の集め方まで決まる

ラインの時間帯に記号を振ると、そのまま希望の集め方になります。9〜11時がA、11〜17時がB、17〜23時がC——のように。

スタッフは「15日 C」と書くだけで済み、店は集まった希望をそのままラインに置けます。集めやすくするための記号ではなく、ラインを時間の帯に切っただけなので、組み直しが起きません。

聞き方をこう変えると希望が集まる理由は、シフト希望が集まらないに書きました。人起点のシフトだと、この記号が作れません。何人必要かが先に決まっていないからです。

削るなら、人ではなくラインを削る

売上を作るシフトにすると、削り方も変わります。

人を削ると、どの時間帯も少しずつ薄くなります。忙しい時間帯まで薄くなるので、回転が落ちて売上が減り、人件費率は下がりません。

ラインを削るとは、たたむ時間帯を決めることです。「14〜17時はレジ・ドリンクの持ち場を閉じて2人で回す」「準備は前日に30分前倒しして朝を1人減らす」。持ち場ごと、時間帯ごとに閉じるので、売上の山は無傷のまま人時が減ります。

人件費は削るものではなく、配るものです。配る先がラインで、ラインがあるから、削る場所も厚くする場所も迷わず決められます。

手作業の限界

ラインは紙に描けます。ただ、続けると次で止まります。

  • 曜日ごと、売上目標が変わるたびに描き直しになる
  • 希望をラインに当てる作業が目視になり、当てた結果の人時が合っているかを毎回数える
  • 「ラインどおりに置けたか」が週をまたぐと残らない

とくに最後が効きます。ラインと実際のズレが残らなければ、毎週同じ時間帯で同じ苦労をします。

まとめ

  • 人件費が下がらないのは、削り方ではなく起点の問題。人起点のシフトだから
  • 売上を作るシフトは、売上目標からラインを描いて人を当てる
  • ラインを描いた時点で人件費は決まる(モデル例: 62人時 × 1,100円 = 68,200円)
  • 埋まらない枠は時間で示して募る
  • 削るなら人ではなくライン。たたむ時間帯を決める

ラインの元になる人時は、人時シミュレーターで出せます。目標の売上と人件費率を入れると、1か月に使える人時と1日あたりの人時が出ます。登録もログインも要らず、入力した数字はお使いの端末の中だけに残ります。