シフト希望が集まらないのは、スタッフの意識が低いからではありません。聞き方が自由すぎるからです。人は自由すぎると動けなくなります。

「今月、いつ出られますか」をやめて、選ぶだけにすると集まります。

「今月の希望を出して」は、実はとても重い質問

白紙を渡されたアルバイトスタッフは、頭の中でこれだけのことをやっています。

  • これから1か月ぶんの自分の予定を思い出す
  • 店の営業時間と、忙しい時間帯を思い出す
  • 何時から何時までなら店の役に立つのかを推測する
  • それを日ごとに、文章で書く

3つ目が特に重い。店が何を必要としているかを、聞かれた側が推測しているわけです。分からないので後回しになります。後回しが積み重なって、締切を過ぎます。

つまり、締切を守らないのは結果です。原因は聞き方にあります。ここを直さずに締切だけ厳しくすると、出てくるのは「とりあえず書いた希望」になり、かえって使えません。

直し方① 時間帯に記号を付けて、選ぶだけにする

私が店長のときは、時間帯に記号を振っていました。

記号時間主に埋める場所
A9:00 – 17:00開店準備から昼のピークまで
B11:00 – 17:00昼のピークだけ
C16:00 – 23:00夜のピークから閉店作業まで
D17:00 – 21:00夜のピークだけ

こうすると、希望の出し方は「15日 A、16日 C、18日 D」だけになります。文章を書く必要がありません。推測する場所がゼロになるので、その場で出せます。

🔴 大事なのは、記号を思いつきで作らないことです。記号は、その日に人を置きたい形からそのまま作ります。開店準備に何人時、昼のピークに何人、夜に何人——これが先にあって、それを時間の帯に切ったものが A・B・C・D です。

出し方はこの逆で、必要な人数を時間帯ごとに出してから帯にまとめます。手順は適正人員の出し方に書きました。

店の都合と無関係な記号を作ると、集まっても組み直しになります。 集めやすくするための記号ではなく、そのまま配置に使える記号にします。

白紙で聞く場合と、記号から選ばせる場合の比較。白紙は「今月いつ出られますか」に対して、予定を思い出す・営業時間を思い出す・何時なら役に立つか推測する・日ごとに書く、の4つを聞かれた側が背負い、後回しになる。選択式は「15日はA〜Dのどれで入れますか」に対して、A 9:00-17:00 / B 11:00-17:00 / C 16:00-23:00 / D 17:00-21:00 から選び、「15日 A」と書くだけで済む

直し方② 日別に、必要な枠を名指しで募る

記号ができたら、募り方も変わります。「今月の希望を出して」ではなく、こう言えます。

20日(土)の C を、あと2人。 22日(月)の B を、あと1人。

全部の日を平等に募る必要はありません。足りない日の、足りない枠だけを名指しする。 聞かれた側は「その日その時間に出られるかどうか」だけを判断すればよく、答えるのが一瞬で済みます。

日別のラインを見せて募ると、もう1つ効きます。自分がどこを埋めているのかが見えるようになります。「20日の夜が薄い」と分かって手を挙げた人は、ただシフトに入っているのとは違う入り方をします。

直し方③ 「いつでもOK」の人は、そのまま出してもらう

学生でない方や、掛け持ちの無い方には、時間の制約が少ない人がいます。その方たちに細かく記号を選ばせる必要はありません。「いつでもOK」の1行で構いません。

ただし、組むときに気をつけることがあります。

🔴 「いつでもOK」の人を、先に入れてしまわない。 自由に動ける人を先に固定すると、あとから出てきた穴を埋める余地が無くなります。順番はこうです。

  1. 枠が決まっている人(A・B・C・D で出した人)を先に置く
  2. 残った穴を見る
  3. 「いつでもOK」の人を、その穴に当てる

この順番にすると、同じ人数でも埋まり方が変わります。いちばん融通が利く人を、いちばん最後まで取っておくということです。

それでも残る差は、時間で返す

記号にして名指しで募っても、必要な量に届かない月はあります。そのときは差を数字にします。

数字で追う(モデル例)

実在の店舗ではなく、説明のためのモデルです。

項目
今月使える人時(売上目標から逆算)1,012.3時間(1日あたり 40.5時間)
集まった希望の合計900時間
足りない人時112.3時間(約2.8日ぶん)

今月使える人時の出し方は人件費率がオーバーする原因に書きました。集まった希望を足して差を出すと、「なんとなく足りない」が「約112時間、2.8日ぶん足りない」になります。

この差を、また日と枠に分けて返します。

土曜の C を、あと1人。日曜の D を、あと1人。出せる人は水曜までに。

丸一日で募ると手が挙がりません。記号なら、4時間の D なら出せる人が見つかります。足りない分を人数ではなく時間で数える理由は、人手が足りなくて組めないときに書きました。

出したものが返ってくると、次も出る

聞き方を直しても、返ってこなければ続きません。

シフト希望の片道と往復を比べた図。片道は「希望を出す」から「返ってこない・いつ決まるか分からない」に進んで途切れ、次は出さなくなる。往復は「希望を出す」→「公開日にシフトで返る」→「足りない分を土曜のCをあと1人と枠で返す」→また希望を出す、と輪になってつながる

返す形にするために、2つだけ決めます。

決めること
希望の締切毎月15日
シフトの公開毎月20日
締切後の扱い締切までに出た希望から先に反映。遅れた希望は空いている枠だけ

3つ目が要です。「守ってください」と言う代わりに、守った人から先に通るという順番にします。注意で動かすと店長が言い続ける限りしか続きませんが、順番なら店長が黙っていても回ります。

あわせて、正式な集め方は1つに決めます。 LINE で来る人、紙で出す人、口頭で言う人が混ざると、店長が3か所を見て1つにまとめる作業が発生し、転記ミスも起きます。1つにすると「出したのに入っていない」が無くなり、出す側も安心して出せます。紙でも LINE でも構いません。決めるのは「どれが正式か」だけです。

公開したシフトに、出した記号がそのまま入っている。足りない枠は名指しで知らされて、自分が入った4時間が穴を埋めた。これが2〜3か月続くと、希望の出方が変わります。人は、反応が返ってくることを続けます。返ってこないことはやめます。

手作業の限界

記号を作るところまでは、紙でもできます。続けると次で止まります。

  • 記号のもとになるその日に必要な人数を、日ごとに出し続ける必要がある
  • 集まった記号を人時に直す足し算を、毎月全員ぶんやることになる
  • 足りない枠を出すには、集まった希望と必要な量を毎回引き算する
  • 第2募集の結果を、また足し直す

とくに2つ目が重く、結局「目で見てなんとなく」に戻りがちです。仕組みは正しくても、足し算が続かないところで崩れます。

まとめ

  • 集まらないのは意識ではなく、聞き方が自由すぎるから。人は自由すぎると動けない
  • 時間帯に記号(A・B・C・D)を付けて、選ぶだけにする。推測する場所をゼロにする
  • 記号は思いつきで作らず、その日に人を置きたい形から作る。そのまま配置に使えるようにする
  • 募るときは「20日の C を、あと2人」と日別・枠別に名指しする
  • 「いつでもOK」の人は、そのまま出してもらい、組むときは最後に当てる
  • 残った差は時間で数えて返す。締切と公開日をセットで固定し、守った人から先に通す

記号のもとになる今月使える人時は、人時シミュレーターで出せます。目標の売上と人件費率を入れると、1か月に使える人時と1日あたりの人時が出ます。登録もログインも要らず、入力した数字はお使いの端末の中だけに残ります。