シフト作成に時間がかかるのは、要領が悪いからではありません。毎月ゼロから「この日は何人必要か」を考え直しているからです。

一度だけ考えて表にしておけば、翌月からは当てはめるだけになります。

時間がかかっているのは「並べる作業」ではない

シフト作成を思い浮かべると、名前を枠に入れていく作業が浮かびます。ただ、実際に手が止まるのはそこではありません。

止まるのはこういう瞬間です。

  • 土曜は何人入れるんだったか
  • 先月の同じくらいの売上の日は、何人でやったか
  • この人数で足りるか、多すぎないか

どれも「判断」であって「作業」ではありません。 そして判断は、毎月まっさらな状態からやり直しています。だから毎月同じだけ時間がかかります。

そして、時間がかかるだけでは終わりません。基準が無いまま組むと、人数は「入れる人がいるかどうか」で決まっていきます。希望を出してきたから入れる。空いているから入れる。その日に何人必要かとは関係のない理由で、人数が決まります。

作業を速くする道具を入れても、この部分は短くなりません。

判断を毎回やり直さないために

やることは1つです。「この売上のときは、何人時」を先に決めて表にしておく。

人時(にんじ)は、働いた人数に時間をかけた合計です。3人が4時間なら12人時。人数だけだと「3人体制」が4時間なのか8時間なのか区別できないので、時間の単位で持ちます。

表はこういう形になります。時給は平均1,100円としたモデルです。

その日の売上必要な人時人件費(平均時給1,100円)人件費率
20万円48時間52,800円26.4%
25万円55時間60,500円24.2%
30万円62時間68,200円22.7%
40万円78.5時間86,350円21.6%
50万円95時間104,500円20.9%

売上が倍になっても人時は倍になりません。開店準備や締め作業のように、売上に関係なく必要な時間があるからです。その結果、暇な日ほど人件費率は高く出ます。 20万円の日は26.4%、50万円の日は20.9%。表のとおりに置いても、この差は自然につきます。

ここが分かっていると、暇な日に率が高いのを見て慌てて削らずに済みます。見るべきは率そのものではなく、表からどれだけずれたかです。

この「増え方の鈍さ」こそが、表を持つ価値です。 感覚で置くと、忙しい日に足りず、暇な日に余ります。

最初の3行は、自店の実績から作る

ゼロから理論で決める必要はありません。直近3か月からうまく回った日を3日えらび、その日の売上と実際の総労働時間を書き出してください。それが最初の表になります。

「うまく回った日」の定義は、店によって違って構いません。クレームが出ず、締め作業も長引かず、スタッフが疲れ切っていなかった日。それが自店の基準です。

48時間が決まっても、まだシフトにはなりません

表が出すのは、その日に使ってよい時間の総量だけです。48時間という数字は、それを何時に置くかまでは教えてくれません。

同じ48時間でも、置き方で店は別物になります。

  • 開店前の仕込みに何時間かかるか
  • 売上の山が昼なのか、夜なのか、その両方なのか
  • 閉店後の締めと翌日の準備に、どれだけ残る必要があるか

これは店ごとに違います。ここを埋められるのは、その店の1日のリズムを知っている店長だけです。

同じ48人時を2通りに配った比較図。左は11時から21時まで均等に置いた場合で、点線で示した売上の山に対してピークで足りず、暇な時間に余っている。右は売上の山に合わせて置いた場合で、同じ48人時が昼と夜のピークに寄っている

だから手順は2段になります。

  1. 総量を数字で決める — 売上目標を表に当てて、その日の人時を出す
  2. 配分を経験で決める — 売上の山に合わせて、その人時を時間帯に配っていく

1番は毎月同じ作業なので、一度決めれば考え直す必要がありません。2番は店長にしかできない仕事で、本来はここに時間を使うべきところです。

人件費は削るものではなく、配るものです。 総額は売上目標が決めてしまいます。店長が動かせるのは、どの時間帯に厚く置くかのほうです。

配ったあとに、その置き方でいいか確かめる

配分の良し悪しは、時間ごとに逆から見ると分かります。「この時間に何人置くなら、その1時間でいくら売れている必要があるか」です。

たとえば6人置く時間帯なら、その1時間で4万円ほど売れている前提になります(この数字は初期値で、自店の実績に合わせて直します)。過去の時間帯別の売上と並べて、前提のほうが高い時間帯があれば、そこは置きすぎということです。

Profit Shift のシフト画面は、これを1行で出します。置いた人数から時間ごとの必要売上を計算し、1日ぶんの合計も出るので、その日の売上目標と見比べられます。人を足したり引いたりすると、その場で数字が動きます。

シフト画面の下部。時間ごとの実人数の行と、その人数から逆算した必要売上の行が並んでいる。1日の合計は255,000円で、画面上部の売上目標305,000円と見比べられる

一番下の行が、その時間に置いた人数から逆算した必要売上です。合計と売上目標を見比べれば、その日の組み方が目標に対して厚いのか薄いのかが、組んでいる最中に分かります。

数字そのものより、どの目標に向けて組んでいるか

ここまで出してきた人時も必要売上も、店によって違います。 立地も業態も客単価も違うので、他店の数字をそのまま借りても合いません。

大事なのは数字の正しさではなく、その日のシフトがどの目標に向けて組まれているかがはっきりしていることです。目標が決まっていれば、ずれたときに何がどれだけずれたのかが分かります。分かれば直せます。

逆に、目標を決めないまま組んだシフトは、あとから見ても良かったのか悪かったのか判断できません。改善のしようがないのは数字が間違っているからではなく、比べる相手がないからです。

毎月の作業がどう変わるか

表があると、毎月の入り口が「考える」から「当てはめる」に変わります。日別の売上目標を入れれば、その日の人時はもう決まっています。残るのは時間帯への配分と、誰を置くかだけです。

考える時間が消えるので、短くなるのは体感でわかります。そして副産物のほうが大きいことがあります。 「なぜ土曜は5人なのか」をスタッフに説明できるようになるからです。

根拠が表にあると、シフトの相談が交渉ではなくなります。「今月は厳しいから」ではなく「この売上ならこの時間」と言えるようになると、話が人の問題になりません。

時間帯に目標があると、店長が言わなくても動きが変わる

必要売上の行には、もうひとつの効き方があります。その数字を見るのが、店長だけではなくなることです。

月間の人件費率は店長の数字です。アルバイトスタッフから見ると、自分の仕事とのつながりがありません。「今月は厳しい」と言われても、自分がいる時間に何をすればいいのかは分かりません。

でも「この1時間で4万円」は、自分がいま立っている時間の数字です。あと何をどれだけ売れば届くのかが、そのまま今日の自分の動きになります。

私がコールド・ストーン・クリーマリーで店長をしていたとき、一番はっきり変わったのがここでした。時間帯の目標を出すようにしてから、アルバイトスタッフが自分から売上を見に来るようになったんです。手が空いたときに何をするかが、こちらが指示しなくても変わりました。

数字を見せると萎縮するのではないか、という心配はあると思います。ただ実際に起きたのは逆でした。嫌なのは、届かなかった数字を後から責められることです。いま何を目指しているかが先に分かっているほうが、働きやすさに効きます。

この行は、人を置いた瞬間に出ます。紙で同じことをやろうとすると、時間帯ごとに人数を数え、対応する売上を引いて、足し上げることになります。1日ぶんだけでも骨が折れますし、人をひとり動かすたびにやり直しです。

まとめ

  • シフト作成で時間を食っているのは「並べる作業」ではなく「毎回やり直す判断」
  • 「この売上なら何人時」を一度だけ決めて表にする。暇な日ほど人件費率が高く出るのも、そこで見える
  • 表が決めるのは総量まで。時間帯への配分は、店のリズムを知る店長の仕事
  • 時間帯に目標があると、アルバイトスタッフが自分から売上を見るようになる。店長が言わなくても動きが変わる
  • 人時も必要売上も店ごとに違う。大事なのは、その日のシフトがどの目標に向けて組まれたか

その表の元になる数字は、人時シミュレーターで出せます。目標の売上と人件費率を入れると、1か月に使える人時の上限と、1日あたりに直した人時が出ます。登録もログインも要らず、入力した数字はお使いの端末の中だけに残ります。